沖縄の設計事務所/建設会社です
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「不器用な人」のための建築家(女性)

先週 とある岐阜の建築家(女性)と半日程 お喋りをした。


薄く広く、何でもざっくり知っているような状態にありたいと常日頃心掛けているのに、建築家(女性)及び そのお師匠さんと話していると、聾桟敷に置かれたように 知らない話題が多い。


スマホに変えて思うのは、メモを取るのには紙に遠く及ばないということだ。


字を書くスピードは遅いし、スケッチも描けない。。 誰かと話したときは詳細な議事録を残すのが趣味なのだけれど、最近は議事録が残せない。何も覚えていない・・


そんななかで、ある若い女性店主の経営する 雑貨屋さんのことが話題になった。


それは、岐阜では人気のある雑貨屋さんで、広さも品数もうんと絞っている割に、根強い(特に女性)ファンがいる。


が、僕には、中途半端に思えて、人気の理由が判らなかった。


カウンターの上の小さな人形と一輪挿しの色が調和していない・・云々。


モノ造りをする人の中には、何の気なしにパパっとあつらえた色やモノの組み合わせが、見事に調和している、という人がたまに居る。


そういう人が造った空間は、全ての要素が調和し呼応している、それが 無い。


「計算なんですよ」


と建築家(女性)が言った。


「彼女(店主)は、幼少の頃から、まわりの女の子たちから 一目置かれる女の子だったのでしょう。」


「まわりの子達より少しだけ豊かで、少しだけスポーツも勉強も出来、少しだけお洒落で、付き合う男子も少しだけ憧れの対象で、学級委員なんかをしていたことで

しょう。ファッションリーダーだったわけ。」


「そして彼女は、今も 「あるタイプの女子たち」が、こうなりたいと憧れる生活を地で行っているのです、だから人気がある」


「あるタイプの女子って?」と僕。


「見かけによらず保守的で、ステレオタイプを踏み越えない範囲でお洒落で、独創的ではないけど能動的で、(予算的・センスの上で)手の届く範囲内のことには非常に詳しい。背伸びはしたいけど、ジャンプはしない、この辺りには結構居るタイプの女子ですよ。」


「彼女(店主)は、そういう女子たちに向けて、メッセージを発しているんですよ、私のように余裕のある結婚生活をして、可愛いお店を持ち、優雅に暮らしたいでしょう?って。」


「尖らないことに意味があるのです。センスを売ってるのではなく、ライフスタイルを売ってるんです、絶妙のバランスなんです。」


・・かねてから、建築家(女性)の分析の鋭さと、言語化の正確さには 小気味よさを覚えていたけれど。


最後に 建築家(女性)は付け加えた。


「彼女(店主)は素晴らしく 要領がいいタイプの方だと思うんですよ。そして、私は 要領が悪い不器用な人のために建築を造りたいと思うんですよ」

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テイスト

意匠について迷ったときはおおかた 服部真和君 に相談するようにしている。


住宅設計では、一般的な建築よりも、構成のウェイトが低く、テイストのウェイトが高い。


住宅は建築のなかでも最もセンチメンタルなジャンルだからだと思う。

公共よりプライバシー、理性より情感を受け持っている。


情感には説明は要らない。感じるかどうか、それだけ。

テイストの精度が住宅のレベルを決める。


2次元で描かれた図面を見て、ニッチの深さと色について助言をくれたのも服部君だった。


「10cmでは深すぎますよ、奥に木とか貼っちゃダメですよ」


テイストを読み取った上で、不純物を取り除く助言が出来る人は、僕の知る限り 杉下均さんや 金森正起さんなど 数少ない。


現場監理も、模型の仕事も、あまり人がやりたがらない(事務所の財政を支えるものらしい)建設会社の 確認申請代行 の仕事なんかも 同じ熱心さと密度で取り組む彼が、優れた能力を磨り減らされず、いつか開花するのを楽しみにしている。

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