宇野友明さんのオープンハウスに参加させて頂きました。
宇野さんは 建物の中にあるものほぼ全てを職人さんを使って設計製作してしまう人です。
(電設資材等バックでは既製品を組み合わせて使われるが、表に見えるのは手製)
これは、恐らく100年前は珍しいことではなかったと思いますが(近代建築以前は、建築家は ドアノブから家具から全部 設計していたので) 今は大変珍しい、というか稀有です。
宇野さんとは、4〜5年前お会いしたときから、文通をさせて頂いたり、お話をさせて頂いていて、今回も2時間ほど お話を伺うことが出来ました。 (怖い人と思われていますが、実際は聞いたことには何でも答えて下さる方です、話がまた面白い。)
Q: どうすれば、宇野さんのように自分の興味ある仕事だけを出来るようになりますか?
A: 信念を曲げずにずっと同じ場所に立ち続けること。決して仕事を取りにいかず,食えない時は設計で稼がないこと。
Q: 原寸図を描いても、監督さんに拒否されて 職人さんに取り次いでもらえません。
A: 本当にしたいことがあれば,見積をする前に現寸図なりでしっかりと意思表示をすること。請負契約の後は,責任(主導権)はすべて工務店に渡っているので,その段階での意思表示はルール違反。契約前に見積を正確に査定するのも設計者の重要な責務です。
Q: 設計施工には憧れますが、私に出来るとは到底思えません。
A: とにかくリスクを回避するために設計のスキルをあげることです。正確な設計をするために施工をよく知ること。正確な金額を把握するために設計書をを自分で作ること。かつて設計図書とは設計図(図面)と設計書(見積もり)のことでした。
いつの間にか設計書を作らなくなったために、設計者にコストの意識が薄れてしまいました。コストを理解し、工務店の利益を正当に評価すれば、工務店との信頼関係も容易になります。
Q: 事務所の格を上げて、裁量と予算の自由を得るためには まずは件数を増やさざるを得ません。
A: 常に自分の信念に従い,何ができて何ができないかを明確にすること。どうしても信念に合わない仕事をしなければならない時は、間違ったメーセージが出ないようにするしかない。時間がかかったとしても同じメッセージを出し続けるしかない。いつか必ず価値観の合う施主と出会えるものだ。これは忍耐の問題だと思う。
Q: ストーブや照明器具 設備機器など 宇野さん設計の機器をプロダクトとして売るつもりはないのですか?
A: 実はそういう依頼は多いです。特に海外から月に3、4件問合せがあります。ものづくりを楽しんでいるだけで,商売にしようと考えたこと全くありません。その瞬間に楽しくなくなってしまいそうです。また同じものは作りたくないです。彼らに図面を差し上げるから自分で作れと言ってます。(笑)
Q: 50台超えても若い頃と同じ質の作品を作り続ける建築家が殆ど居ないのは何故でしょう?
A: みんなが悩む工務店の壁を乗り越えないままにやり続ければ,ボクが答えるまでもなく、建築家にとって設計し作ることはそれほど魅力のあるものではなくなってしまいます。いまだって現場のあの熱狂から建築家は少し外におかれていませんか。同じ仕事を期待され,挑戦することも許されない仕事は,ルーティーンになり緊張感やときめきがなくなるのも当然です。いつの間にか建築が,虚栄心と自己顕示欲を満たす道具になってしまいます。周囲に助言する人もいなくなり,哀れな裸の王様になってしまいます。資本にとって裸の王様と化したブランド建築家はとっても都合のいい存在です。自らの脚元をしっかりと見据え続けることは容易なことではありませんが、生まれてきた意味、価値,悦びとは何かを常に問い続けることだと思います。
と いうことは、宇野さんの作品を楽しみ続けるためには、(プロの間では既に有名ですが) 一般の人の間で有名にならない方が良いということになりますね。
→笑
設計を営む方々からの同様の質問が多いため、宇野さんが返答をコラムとして書いてみえます。